【薬剤師が伝えたい】虫歯

症状

虫歯(う蝕)とは

う蝕とはむし歯のこと。歯の硬組織の表面が細菌の酸産生により崩壊され、エナメル質やセメント質から象牙質へと進行し、実質欠損を形成する代表的な歯の疾患。

歯科領域の2大疾患は、虫歯と歯周病で、歯を失う原因の4割がう蝕、5割を歯周病が占める。
歯を失うことにより咀嚼(そしゃく)能力が低下し、栄養バランスが崩れ生活習慣病(がん、糖尿病、脳血管疾患、心疾患)のリスク因子となることが明らかにされています。そのため、「健康日本21」の9つの対象分野の一つに「歯の健康」があります。

虫歯は、かぜ(感冒)と並んで、最も一般的な病気の1つで、歯科医師によって正しい処置が行われなければ大きくなり続け、最終的に歯を失うことになります!

虫歯の原因菌として最も一般的なのがストレプトコッカス・ミュータンス(レンサ球菌) Streptococcus mutans。
虫歯は世界で最も多い疾患であり、未治療のむし歯は日本でも多くの人に存在します。

近年は高齢者において虫歯は増加しています。
特に、溝の細菌は歯磨きでは取り除けず、そのため歯磨きをしていれば虫歯を防げるという常識は現在では正しくないことが分かっています

虫歯の原因 

1.虫歯菌 ミュータンス連鎖球菌などが糖質からグルカンを合成し歯に強固に付着し酸を作り出す。

2.歯の質:歯の質が弱い、歯並びが悪い、噛み合わせがうまく合っていないと虫歯になりやすい。

3.食事:歯につきやすい砂糖(糖質)を多くとると、プラーク(歯垢)中の虫歯菌が酸を作りやすくなる。

4.時間の経過:プラークが歯に付着した時間が長いと、細菌がう蝕の原因になる酸を作る。

主にこの4つが原因と言われています。

 

虫歯の危険因子

  • 歯垢(細菌、唾液、食べものかす)。
  • 歯石。歯の表面の欠損。糖分が多い食べもの。
  • 酸性の食べもの。
  • 歯の中のフッ素成分が少なすぎる。
  • 唾液の分泌量の減少。
  • 唾液分泌を減少させる薬の服用(シェーグレン症候群など)
  • キスや子どもの食べものの味見、食器の共用など。

 

加齢に関連する注意点:歯の喪失

加齢に伴って歯を失う可能性は、近年着実に減少しています。
この変化には、栄養状態の改善、口腔ケアが受けやすくなったこと、虫歯や歯周病に対する処置が進歩したことが挙げられます。
歯がなくなると、ものを噛むときに大きな妨げとなり、話すことも困難になります。
唇、頬、鼻、あごが歯の支えを失い、顔の外見が大きく変わることもあります。
歯を何本か、またはすべて失った人も食べることはできますが、軟らかいものを食べがちになります。軟らかい食べものは、炭水化物量が比較的高く、タンパク質、ビタミン、ミネラルが少なくなりがちです。また、肉類、鶏肉、穀物、生の果物や野菜など、タンパク質、ビタミン、ミネラルを多く含む食べものは、硬い傾向があります。その結果、軟らかいものを主に食べている高齢者は低栄養に陥ることがあるので注意してください。

 

虫歯の診断

歯科医師による評価と歯科用X線検査です。自分では診断は出来ませんので気になれば受診するようにしてください。
歯科検診は6~12カ月毎に受けるべきとされています。

 

虫歯の予防

以下の予防法を家庭・地域・保健サービスの現場で、バランスよく組み合せることが必要!

  1. 甘味飲食物の過剰摂取制限:甘味食品・飲料の摂取回数が多くなるほど虫歯のリスクは高い。
  2. 歯垢の除去:正しい歯磨きをしてプラークをためないようにする。
    毎日朝食の前または後と就寝前に歯ブラシとデンタルフロスによる歯磨きをして歯垢を取り除く。
  3. フッ化物:フッ素元素の陰イオン(F)の状態にあるものをフッ素イオン、またはフッ化物という。特に、エナメル質の酸への抵抗を高め、虫歯をできにくくする効果がある。
    下記の方法により予防する。
    ・フッ素入りの歯磨き剤:世界で最も利用者人口が多い方法。・定期的に歯科医院でのフッ素塗布。・フッ化物洗口:一定濃度のフッ化ナトリウム溶液(5~10ml)を用い、1分間ブクブクうがい    を行う方法。永久歯のむし歯予防手段として有効。第一大臼歯の萌出時期(就学前)にあわせて開始し、中学生時期まで続ける。保育園・幼稚園・小中学校で集団実施されるが、個人的に家庭で行う方法もある(洗口剤一覧添付)。・水道水フロリデーションは、飲料水中のフッ化物濃度を適正量(約1ppm)まで調整する方法。現状のむし歯有病状況を半分以下にするという効果が確認され、安全性と効果については専門機関が保証している。緑茶や紅茶にもフッ化物が含まれるが、その濃度は水道水フロリデーションと同じくらいであり、身近な食品に近い濃度のフッ化物でむし歯を予防する方法として知られている。
  4. シーラント:奥歯のかみ合わせの面にある小さな溝の深い部分を歯と同じ色をしたプラスチックであらかじめ埋めてしまう処置方法。虫歯の予防効果は90%以上。
  5. 口腔衛生状態を清潔に保つことと定期的な歯科検診。
    歯垢はできて間もないうちは軟らかく、毛先が柔らかい歯ブラシやデンタルフロスで、少なくとも24時間に1回取り除くとできにくくなる。約72時間経過すると歯垢は固くなり、除去し難くなる。定期的な歯科検診が必要となります。
  6. キシリトール:虫歯予防効果が実証されている天然甘味料。
    食後にキシリトール配合のガムなどを摂取するのは有効。
    特定保健用食品(トクホ)として厚生労働省認可の機能性食品で、健康強調表示と許可マークの表示が可能。
    他に、いろいろな代用甘味料が開発されており、内閣府消費者庁が許可している特定保健用食品や国際トゥースフレンドリー協会認定食品に利用されている。

虫歯予防のため、特に食間にはこれらの食品を活用し、メリハリのある食習慣をつけることが肝要

 

正しい葉の磨き方

むし歯を防ぐには、歯磨きで歯垢(プラーク)をしっかりと取り除くことが大切です。

歯磨き方法の基本と工夫

正しい歯磨きのポイント

歯磨きのアイテム選びも重要

卒乳時期とむし歯の関係

乳幼児期における哺乳びんによる不適切な飲料の与え方卒乳時期を逃した授乳、とくに夜間の授乳は、特有のむし歯の症状を引き起こすことがある

乳歯が生え始め、離乳食が始まったら、哺乳びんを使って甘味飲料を与えることを避けるとともに、寝ながらの授乳は控える。乳幼児期のむし歯の発症には多くの要因が関わっているため、卒乳に関する適切な対応フッ化物の応用などを含むむし歯予防の実践が求められる。

子供のむし歯の特徴と有病状況

学校健診で多くの年齢の子供たちに最も多い疾病がむし歯である。

生えてから間もない歯は弱く、また甘い飲食物を好むことが多く、子供はむし歯になりやすいことで知られている。子供のむし歯は減少を続けているが、地域格差が存在する。子供のむし歯の多くは奥歯の溝から発生し、この予防には溝を埋めるシーラントやフッ化物の利用が有効。また、地域格差の解消には地域の社会環境・生活環境を改善することが大切。

 

大人のむし歯の特徴と有病状況

20歳以上の9割以上がむし歯の罹患経験を有する。
また、20歳以上の3割が未処置のむし歯を有している
40歳以上の年齢において、約4割はむし歯が原因で歯が抜かれている
成人期には、歯周病対策だけでなくむし歯への対策も重要である。

 

<参考>訪問歯科診療

訪問歯科診療とは、要介護高齢者が在宅や施設で歯科診療を受けられるもの。

要介護高齢者の多くは、歯科的な問題を抱えているにも拘わらず、これまでの外来での歯科受診は70~74歳をピークに、その後急速に減少する実態があります。歯科治療をはじめとする口腔機能の維持管理は、食べるという機能ばかりでなく、生きる力やQOLの向上に寄与することが明らかになってきました。身近なかかりつけの歯科医などに相談し、外来受診が困難な場合であっても治療をあきらめないことが重要である。

 

【厚生労働省>e-ヘルスネット】
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-001.html

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