【薬剤師が伝えたい】アルコール誘発喘息

症状

今回の記事は専門用語も含まれるので医療人向けではあります。
出来るだけわかりやすく書いていくつもりです。

喘息とお酒

日本人の気管支喘息患者において、飲酒は喘息の発作誘発因子と考えられています。
実際に調査で67.7%が飲酒により喘息発作を悪化させるとの報告があります。

なぜかというと、
日本人の約半数は、アルコールの代謝酵素であるアルデヒドヒドロゲナーゼの活性が低い”ALDH2*2型”の遺伝子を持っています。
この遺伝子を持った喘息患者では、アルコールが分解しきれず、アセトアルデヒド濃度が上昇し、肥満細胞からのヒスタミン遊離が促進されることで、気道収縮などを引き起こすからです。

アルコール摂取から5分以内に喘息発作が誘発されます。

 

お酒以外でもアルコール誘発喘息は起きます。

ALDH遺伝子が正常の喘息患者でも、
嫌酒(アルコール依存症の方が飲む処方薬)・セフェム系抗生物質を服用中の時、
ホテイシメジやヒトヨタケなどのキノコを食べた時
にもアルコール誘発喘息が起こることが知られています。
これは、薬や食物が持つ作用により体内のALDH活性が低下し、アセトアルデヒド濃度が上昇するため。

薬の中には、薬自体がアルコールジヒドロゲナーゼを阻害し、二日酔いの症状(ジスルフィラム様作用)を引き起こす ”抗結核薬のイソニアジド、エチオナミド”、”抗トリコモナス薬のメトロニダゾール”、 血中のアルコール濃度を上げる”H2受容体拮抗薬のシメチジンやラニチジンなど”も発作を起こすことがあります。

 

アルコール誘発喘息の対処薬

アルコール誘発喘息は、ヒスタミンを主とするケミカルメディエーターが肥満細胞から遊離されることで起こります。

そのため薬は、抗ヒスタミン薬や(脱顆粒を防ぐ)クロモグリク酸ナトリウムが有効と考えられます。

令和になりお酒を飲まないと気まずい雰囲気になるということはほとんどありませんが、どうしても飲酒しなくてはいけないときは、飲酒の2~3時間前に服用することで発作を予防することが出来ると考えられます。

スイッチOTCなどの市販薬でも抗ヒスタミン薬は販売していますが適応があり、それ以外の目的で使用することは出来ませんので、同一成分ではあるかもしれませんが受診し処方してもらうのがいいかと思います。
アセトアルデヒドはロイコトリエンを介し気道敏感性を亢進させるので、
抗ロイコトリエン受容体拮抗薬と吸入ステロイドを中心とした喘息の管理も重要です!

吸入薬に含まれる添加物のアルコールは気にした方がいいの?

キュバールという吸入薬には、添加物に無水エタノールが含まれているが、吸入薬で摂取されるエタノールは微量であり、体内へのアセトアルデヒドが蓄積する可能性は極めて低いので心配するほどではありません。

ただし!
ベロテックエロゾルやオルベスコなど、他にもエタノールを含む商品はあり、アルコール誘発喘息の既往がある場合や気道過敏性が高い場合、アルコール臭に過敏な場合は避けた方がいいです。

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